…だから、キミを追いかけて
「…波留だけやないか…。自分も馬鹿やし………」

今更ながらの後悔をして俯く。

…私は、大人になるのを焦り過ぎた。
ゆっくりで良かった。
何も知らない……子供だったのだから………。



「ごめん…。支離滅裂。……もう聞かんでいいから………」

言おうとすればする程、自分が情けなくなる。
後悔せずに生きるなんて、私には無理だ。

本気で好きになった人には、自分の一番知られたくない過去を知られている。

その時点で……女性としては見られない……。
波留に、私は……相応しくない………。


ゴツン…と、額をテーブルにくっ付けた。
ポタポタ…と落ちる涙は、ファンデーションが溶けて混じったベージュ色。
アイラインを引いてなくて良かった…と、ホッとする。
これで黒まで混じったら、顔を上げた後の自分が情けない……。


「………なんや知らんけど……お前はこの間から泣いてばっかやな。……もしかしたら俺のことが、本気で好きなんか?」


呆れる様に質問された。
その問いかけに、私は既に答えを言っている。…これ以上、なんと答えればいいのか……。

「そ…」

ゆっくりと、動揺を抑えながら立ち上がった。
パクパク…と肋骨の下の臓器が鳴っている。

虫の声も、赤トンボの羽音も、全部耳からかき消されていく。
耳鳴りのような動悸が始まりだすのを止めようとして、私はわざと大きな声を発した。


「そんな事…ある訳ないやん!…波留は自意識過剰やね…!やから馬鹿!って言うんよ!」


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