…だから、キミを追いかけて
頭の中では、もう一人の自分が居て、懸命に言葉を制御しようとしている。

口を謹め、私ーーー!
それ以上言ったら、女子じゃなくなるーー!
波留がますます遠くなるよ⁉︎ それでもいいのーーー!?

口の悪さで胸が痛くなる。だけど、言葉は納まりきらず、無用な言い訳までも足してしまった。

「…私は、この町で幸せな結婚して…子供を産んで育てると言うたやろ⁉︎ どっかに行くかもしれん波留のことなんか……好きになる訳ないやん!」

心とは反対の叫びに似た声が飛び出す。

…馬鹿だ馬鹿だ!と言って、自分の頭を叩きたい。

捻くれたことを言うな……!

馬鹿は私だっーーーー!




ポカン…と口を開けたまま、黙り込む波留の顔から視線を逸らした。
彼の顔を見るのも、声を聞くのも気が引ける。
言い過ぎた口元に手をやるのも忘れて、私はぎゅっ…と唇を噛んだ……。

そんな私の向かい側で、波留はハッキリと聞こえる程大きな溜息をついて立ち上がった……。



「……よう分かった!」


半ギレ?いや…この態度は…………本気だ……。


「変なこと言うて悪かった!そんな嫌われとるとは、思っとらんかったわ!…俺は夕夏のこと……マジで好きになりかけとったのに……!」


邪魔したな…と逃げて行く。

ジャリジャリ…と砂を鳴らす様な足音が遠のく。

その彼に向かって、澄良が呼び止めている。
ーーでも、どうやら戻ってくる気はないらしい。
高い大きな声で波留の名前を呼ぶ澄良を背中越しに意識しながら、頭の中では、彼が言った言葉を反芻していた……。




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