…だから、キミを追いかけて
(今……なんて言った……?)

心が問いかける。


(マジで好きになりかけとった……とか、言ってなかった……?)

頭が答える。


(誰が……?)

聞き返す。


(誰を……?)

念を押す。





「波留が……私を………」


頭の中の答えが声になって、もう一度、考え直した。


(聞き間違いないじゃないよね……?確かに、「夕夏」って言ったよね……?夕夏って、私だよね……?ここに居る『夕夏』って、私だけだよね………?)




「……もうっ…波留ってば、一体どうしたって言うん⁉︎ 折角人がコーヒー入れてきたのに、飲まずに行っちゃうし…!」

澄良がコーヒーの乗ったトレイを持ち、ボヤきながらやって来る。まいった様に眉をひそめて、何かあったん…?と尋ねられた。

何とも返事がしにくい。
だって、私は今、自分が一番信じられない状況にあるから………。



「あっ……!夕夏っ……⁉︎ 」



いきなり走り出した私の背中から、澄良が叫んだ。振り向きざまに、彼女に向かって謝る。


「ごめん!澄良!ケーキは後で食べるから!ちょっと急ぎの用事、済ませてくる…!」


ーーごめん。

ーーごめんね、澄良。

…食べ物放置して……ごめんなさい、おばあちゃん。

悲しませてばかりいて、心配ばかりかけてごめん……お母さん。


お父さんもごめん…。 航もごめん……。

授かったけど、消えてしまった命にも謝る。


だから……


だけど…………



今は……波留を追わせてーーーーー!




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