…だから、キミを追いかけて
昨日と同じ海岸線を走る。
平日の昼間は交通量も少ない。その代わり土日は渋滞して大変なんだそうだ。


『過疎の地に遊びに来ても、なんも見所なんかないのにねぇ』

以前、祖母がよく口にしていた言葉。
妬みにしか聞こえなかったけれど、考えてみればその通りだ。


……此処には何もない。

あるのは海と、空と、厚かしましくもお節介な人達だけ……


ーー 行くあてもなく島に通された橋を渡る。
平日でもやはり中間地点で車が停まっている。


(今日は習志野ナンバーか……遠くからこんな田舎にわざわざ来るなんて…めでたい人達だな)

サングラスをかけたまま女性が海を眺めている。
日差しがいくら眩しいからって、それじゃあこの海の美しさは味わえない。

時間の無駄。もったいない行為。


(……他人事だから、どうでもいいけど……)

お節介な人達に囲まれて育ったから人の行動がいちいち気になる。
でも、だからといって、それを敢えて否定したりはしない。
突っ込まれるのは面白くないに決まっている。
勝手でしていること。
あくまでも他人事。



昨日よりもスピードを速める。
島の突端まで来て、どうしようか…と悩む。
時間はたっぷりとある。まだ昼の2時前だ。


灯台公園の駐車場に車を停めた。
外へ出ると、青空は高く光って眩しい。

サングラスが欲しくなる。
さっきの観光客の気持ちも分からないではない。
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