…だから、キミを追いかけて
『キヨの時と同じことは繰り返しとうなぁで、見境もなくキスした。した後でバカや…と思うた。下りよう…と言うたのもそのせいや。悪りぃ…。夕夏はもっと、上に居りたかったかもしれんのに……』

『…ううん、いいよ。あの時は私も、もう彼処に居りたくなかったし。でも、キスは………』

ハッとして、言いかけたまま止めた。
赤い顔をしているのが分かる。その熱を帯びた顔を、彼に覗き込まれた。

『…何や?』

間近に見つめる茶色の瞳が笑っている。
その瞳が近づくのを知りながら、ぽろり…と言葉をこぼした。


『もう一度……したかったな…って………』


柔らかい唇の先が、そ…と触れる感覚がして目を瞑った。
入り込んでくる舌先に、背中をゾクッとさせながら、それでも離れていかない波留の存在を嬉しく思った。


ーーー波留となら………

何処へでも行ける。

今度こそ、ずっと………

手を繋いで歩く人だ……と、


心に…刻み込ませたーーーー。






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