…だから、キミを追いかけて
「500円でーす」

黄色の帽子を被ったおばさんが駐車料金を徴収にくる。同じ町民からも料金を取る。これだから苦情が出るんだ…。


「はい…」

大人しく払った。
帰ってきた…とは言っても私は他所者みたいなものだ…。


チャリン…と箱の中にお金を落とした。
その様子を見て徴収係のおばさんが叫んだ。


「あら〜!誰かと思ったら夕夏ちゃんでなぁの!!」


耳に貼りつくような声にビクッとして、思わず顔を上げる。

キョロキョロと周りを気にかける私に構わず、徴収係のおばさんは話しだした。
全く記憶に残ってなかったけれど、どうやら高校時代の友人のお母さんらしい。


「澄良(きよら)が言うとったよ〜!夕夏ちゃんは県外の短大に進学したって。そのまま向こうで就職したんやって⁉︎ 今日はどうしたん⁉︎ 里帰り?」

澄良と言うのは高校時代一番仲の良かった友人。
学年一番の成績を誇る才女で、試験ではいつも彼女に助けられていた。


「はい。…あの、帰ってきたんです。こっちに…」

澄良のお母さんになら真実を話しても大丈夫。
きっとまだ分別がある。その辺のおばさん達と違って。

「そうなん⁉︎ 澄良が喜ぶわ〜!あの子今ね、島の人と一緒になって、この近くでお店やっとんのよ」

後ろを振り向き、道路の方を指差す。

「あの道、左に曲がって500メートル位行ったところ。『Sea Wind 』とか言う雑貨屋兼カフェ」

「へぇー…」
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