…だから、キミを追いかけて
岩肌の切れ目に焦げ茶色した海藻が張り付いている。
若芽だろうか、ヌルヌルとした光りを放っている。近付いたらきっと足を滑らすだろう。


息を吐いて、塀の上に立ってみた。
間近に海が近づく。

そのまま、大きく背伸びをしたーーー




「ーー早まんなよ!!」

ギクリとした声に振り向く。
バランスを崩して後ろ向きに倒れ込みそうになった。


「危ねっ…!!」


上から声が降り注いでくる。
空の方に向かって、思わず見上げた。


眩しいくらいの太陽光に視界が遮られる。
暗く霞んだ灯台のてっぺんに人影が見えるのは気のせいだろうか。



(誰かいる……?)

額に手をあて陰を作る。
少しはっきりしてきた視界の中に、ロープが垂れてくるのが見えた。


「そこから動くなっ!!」


響き渡る声。
男性みたいだ。


「よっ…!」


ひょいっと窓を飛び越えた。

ぎゅっとロープを掴み、引っ張りながらスルスル…と降りてくる。
まるでサーカスみたいな軽業。サルか何かのようだ。


ぽかん…と口を開けて、その人が降りてくるのを眺めていた。
白いTシャツの袖が捲られている。
灼けた肌の両腕は太くて、筋肉がついてるのがはっきりと見て取れる。



地面から5メートル辺りのところで壁を蹴り、ジャンプをして降りる。
筋肉質なわりに体が軽い。
まるで全身がバネみたいだ。


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