…だから、キミを追いかけて
着地すると同時に、こちらへ向かってやって来た。
腕と同じくらい日に灼けた黒い顔をしている。
目の色が薄い茶色で、鼻筋が通っていて眉毛が薄い……


ポカン…としている私のことを茶色の瞳が見定めて、閉まっているベージュ色の唇が大きく開いたーーー


「早まるな!そこから飛び降りても死ねねーからっ!!」


怒鳴るような声に一瞬だけ怯む。でも……


「はっ……?」


男性の言葉に、キョトン…と顔を見つめ返した。



飛び降りる……?


誰が………?




(もしかして……私が……?)



辺りを見回す。

観光客はいない。
ついでに言うなら、塀に上るような人も私くらい。


「下りてこい!これ以上寄らねーからっ!」


3メートルほど離れた場所から緊張気味に声をかける。

もしかして、必要以上に刺激するまいとしている……?



(馬鹿らし……)



ピョン…と跳ねるように飛び降りた。

塀に上ったくらいで自殺願望者と勘違いするなんてどうかしている。
こんな所から飛び降りたって死ねないのは十分わかっている。


飛び降りたら直ぐに男性が走り寄ってきた。

いきなり手を伸ばしてきて、ぐっ!と右手首を掴まれる。
締まるような痛みを感じて、相手の顔を見つめ返した。


ーー肌より髪の毛の色の方が明るい。
身長は180センチくらいあると思う。私よりも頭一つ分背が高くて、逞しい感じの人。


その人が怒鳴った。


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