…だから、キミを追いかけて
皆の知らない私
丘を下り、駐車場に戻った。

澄良のお母さんが走って来て、「ぜひ寄って欲しい」という、彼女の伝言を教えてくれた。


…丁度いい。ムシャクシャしてたから少し頭を冷やして帰ろう。


車に乗り込んで走る。
道路に出た後、左折して500メートルくらい走った左側にブルーの屋根と白い壁が見えてくる。


手前の路肩に看板が置いてある。


『 Sea Wind 』


(ここか…)


砂利の敷かれた駐車場に入った。
車が5台ほど止まっている。まあまあ流行ってるみたいだ。


車の外に出て建物の外観を眺めた。
平屋作りの建物には、壁に沿ってバルコニーが作られてある。
海に面した側が広くなっており、そこだけがオープンスタイルになっているみたいだ。

白い扉を開けて中へと入った。

鉄パイプでできたドアチャイムの音が、涼やかな音を立てて店内に響き渡る。


「いらっしゃいませー!」

高い澄んだ声がする。………澄良だ。




「きゃー!夕夏ーー!!」


気づくなり、いきなり飛びついてきた。
真っ赤なバンダナを頭に巻いて、ストレートのボブスタイルは昔のままで。


「澄良…久しぶり」

肩を抱く。
まるで、高校時代の頃のようだ。

「元気だったー⁉︎ お母さんから電話あってビックリしたよ!帰って来たんだってね!良かったぁー!」

きゃーきゃー言って燥ぐ澄良に合わせる元気はない。
それほど、明るい気持ちにもなれなかった。


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