…だから、キミを追いかけて
20歳の春休みだった。

3月初めに付き合いだしたばかりの彼氏と2人で島を訪れていた。



……初めてできた彼氏で、デートも…キスも…SEXも………

全部…その人が最初だった……。



…好きって気持ちも、愛してるって言葉もなかった。


ただ、「一緒にいたい…」


…それだけで結ばれた人……。



ーーそのまま6年間一緒に暮らした。


惰性のように…
習慣のようにーーー






「……お待たせしました」

ハッと我に返った。
澄良の声に現実を思い出した。


……浸り過ぎていた。

一番…嫌な思い出にーーー



「ありがとう」

持ってきたシャーベットを眺める。
澄良はシャーベットの他に、自分用のジュースとケーキを2人分置いた。

「私が焼いたチーズケーキなの。良かったら食べない?」

「澄良のケーキ⁉︎ 久しぶり!嬉しいっ!」


高校時代もこんなふうにお菓子を作ってきてくれた。


『気が向いたから作ってみた。食べよう!』

ーーそう言って。




フォークで切り離した部分を口に入れる。


「美味しい!懐かしい味!!」


爽やかなレモン風味。
私が大好きだった澄良のチーズケーキの味だ。

「喜んで貰えて良かったぁ!夕夏、コレ大好きだったもんね!」

店でも一番人気なんだと笑う。
屈託のない笑顔。

澄良は……明るくなった……。

< 33 / 225 >

この作品をシェア

pagetop