…だから、キミを追いかけて
「喧しいぞ!」

男性の声に振り向いた。
澄良が立ち上がり、私はそのまま目が点になったーーー。



「波留!」

澄良が名前を呼ぶ。
さっきの失礼な男性が、私達のいるテーブルまでやって来る。

「約束通り、茶ー飲みに来てやったぞ!」

ぞんざいな物言い。これが癖なんだろうか。

「ありがとね!あっ、丁度良かった!紹介しとく!」


澄良が向き直る。
側に立っている男性の眉が、ピクッと持ち上がった。

「夕夏ちゃん。篠原夕夏ちゃんって言うの。私の高校時代の友人で、大の仲良しだった人!…夕夏、こっちは江口波留(えぐち はる)君。さっき話した入江さんの従兄弟で、私達よりも3つ年上!」


「…よろしく」
「どうも…」

無愛想な挨拶を交わす。

澄良が不思議そうに私達を見比べた。


「何⁉︎ 二人とも知り合い?」

聞かれると気まずい。
さっきの今で、思い出したくもない。

「とんでもない!こんな失礼なサル、知り合いじゃないから」

「こっちだって知るか!こんな野良ネコ!」

プイッと背中を向け合う。
訳のわからない澄良がオロオロと取り乱す。

「あ…あの……一体どうしたの⁉︎ 」

交互に見つめる。
波留と呼ばれた男性が振り向いて、澄良に理った。

「俺……帰るわ!また来るって、海斗に言っとって!」

「う…うん…」

了解したように頷く。

男性が背中を向けて立ち去った後、澄良は椅子に座り直して聞いた。

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