…だから、キミを追いかけて
「ねぇ、サルとかネコとかって何の話⁉︎ 」

機嫌の悪い私たちの様子が気になるらしく、そんな一言から始まった。



……灯台であった一幕を話すと、澄良はケラケラと笑い声をあげた。

「…自殺…?夕夏が……?」

苦しそうに呼吸する。

「そうよ、変でしょ⁉︎ ただ塀に上って、海を眺めてただけなのに……バカみたい!」

鼻息が荒くなる。
澄良は涙目になりながら、目頭を押さえて納得した。

「ロープを伝って降りてきた波留がサルね……その通りやわ…」

くくっ…と笑いを堪える。
こっちはネコから野良ネコに進化させられて、頭に血が上っていた。


「あの人、サーカス団か何かなん⁉︎ あんな所から降りてくるなんて、アクロバットもいいとこ!」

シャーベットを口に放り込む。
キーンと痛んだこめかみを押さえる私に、澄良は優しく教えてくれた。

「違うよ。波留はあの灯台の近くでマリンスポーツを教えてるの。ライフセーバーの仕事も兼ねてるし、それで灯台の上にいたんだと思う」

ロープはいつも用意してあるんだとか。
急ぐ時は、階段よりも早いとの理由で。

「それで、命を守る役目をしてるって言ったんだ…」

「うん。海難事故を一早く見つけて命を守るのが仕事だからね…。でも、彼はそれが本業じゃなくて…」

「…キヨ、悪い!店の方にお客さん!」

旦那さんが窓を開けて声をかけた。

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