…だから、キミを追いかけて
「いらっしゃい!待っとったよー!」

自分の座っている席の隣を空け、ココへおいでよ…と手招く。
澄良の細やかな気配りは昔通り。
繊細なままでいてくれる彼女に、ほっと気持ちが和んだ。


(でも……)

目の前にいる男性にはうんざりする。
全く知らない顔でもないのに無愛想。
自分も挨拶すらしないから当然だけど、その仏頂面は頂けない。

コップ酒を水のようにガブガブ飲んでいる。
その勢いの良さに圧倒される。一体、どれだけ強いんだろう……。


「夕夏は何飲む?酎ハイ?ビール?日本酒?フィズもあるよ!」

ツマミの枝豆とキムチを差し出しながら聞かれる。

「お水…」

何も飲む気がないから、そう答えた。

「えっ…⁉︎ 水なの…⁉︎ 」

驚かれた。
同じテーブルに付いていた男女6人の視線が、一斉にこっちに集まった。

「此処に来て、それはねーよ!」

口火を切ったのは、旦那さんの海斗さん。
その言葉を聞いた男性の一人が、グラスを私に持たせた。

「飲めるんだろ?なら楽しく飲もうや!」

返事を待つまでもなくビールを注ぐ。

「オレの名前、星流(せいる)。ヨロシクな。えーっと…」

「ゆ…夕夏です……」

「ユウカちゃんねー!どうもー!」

カチン…とグラスをぶつけられた。
その途端、次々とそのテーブルの人達が自己紹介する。

覚えきれそうにない頭の片隅で、逃げ出したい気持ちが高まっていた。

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