…だから、キミを追いかけて
謝って目を伏せる私の耳に波留のふん…という鼻息が聞こえる。
少しだけムッとする。でも、こう言われた。

「無理すんなって言うたやろ。あんなガブ飲みするから仕方ねぇ!」

あれこれ文句を言われるのかと思っていたから意外だった。
人のことをネコだの野良だの言っていた割に、お酒に関しては寛大なのか…と思った。

「しかし、ゲロ吐かれるかと思って内心ヒヤヒヤしたぞ!女のゲロ吐きなんか見たくねーからな!」

やっぱり波留は波留だ。
優しくなんかない。

「誰が吐くよ!勿体ない!折角飲んだのに!」

こっちも地が出る。どうもこの人に対しては調子が狂う。


「2人共、もうすっかり友達やね」

釣った魚の鱗を取っていた澄良が笑う。獲れたての魚で「海鮮丼を作ろう」と、下処理をしているところだった。

「こいつと友達⁉︎ ジョーダンやめてくれよ!」
「こっちこそ願い下げ!誰がこんなのと!」

手伝うわ…と鱗落としを手に持つ。
魚の捌きなら慣れている。祖母や母に何度も手伝わされたから。


「意外ー!ユウカちゃん、上手ぇーじゃん!」

街から帰ってきたばかりの私だから、こんなの出来ないと思われていたらしい。
お生憎様。こう見えてもウニの下処理だってできるんだから。

「夕夏ん家は磯の前だもんねー。お祖父ちゃんはイカ釣り漁師だったし、イカだってタコだって捌けるんよ!」

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