…だから、キミを追いかけて
同じ町内に住む者達は、「自分達には見返りがない」とボヤく。

島民だけが潤うのはおかしい。
町民税で作られた橋なのに……と。


横から吹く潮風が、髪の毛を巻き上げてしまう。
せっかくセットした髪が乱れるのが嫌で、慌てて車の中へ戻った。

エンジンをかけ、橋を渡ろうと走り出す。

白い橋はジェットコースターのようにうねり、上ったり下ったりする。
橋の真ん中には広い路側帯が設けられ、潮流や昔話の舞台になった岩山を望めるようになっていた。

……町民は、わざわざ車を停めてまで見ようとしない。
車を降りてまで見るのは、他県から来た観光客くらいのものだ。


（所沢…川崎……へぇ…栃木ナンバーまでいる……）


ご苦労だな…と思いながら走らせる。
島の外周を回る道路は、一周しても30分とかからない。

島の端には大きな灯台があって、行き交う船が岩礁にぶつからないよう遥か遠くまで光を放つ役目を担っている。

大人になるまで、この灯台の存在を知らなかった。

白い石造りの灯台は今や観光名所となり、整備された公園の駐車場に沿って地元婦人会の人達が作った浜焼きの店が並んでいる。

サザエやアワビ、干物に海藻。
さほど珍しくもない物を買い求める観光客を尻目に、灯台の裏手に回る道へと出た。


（こんなトコにも店ができてる…）

以前はのっぺらぼうな原野だった場所に、白い平屋建てのカフェが建っている。
< 6 / 225 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop