…だから、キミを追いかけて
「じゃあオレが背負ったるわ!」

星流が手を伸ばす。その手を波留が払った。

「ええ。俺が背負う。お前まで濡れんな!」


よっこらさ…と声を出し、私を背中に担ぐ。

肌が貼り付く。
必要以上に体が密着して、……まるで、抱き合ってるかのような感覚ーーー


「…下ろして!歩くから!」

慌てるように言った。

「バカ言うな!歩けんやろ!!」

気にも留めず、歩み出す。


ドキドキする…。

航以外の男性と触れ合うのは、初めてだから……。




ーー家に着くと、澄良は慌てて中へ走り込んだ。
バスタオルを抱えて戻り、私と波留に引っ掛けた。

「このまま裏口行こ。お風呂場に直行!」

裏口からお風呂へは土間続きになっている。
島の家に限らず、この町の家は殆んどがそうなっている。

「オレも付いて行こー!」

星流の言葉を受け、佳奈さんが殴る。

逞しい。…本当に強い人だ。




ーーーお風呂場へ着くと、澄良は蛇口を捻った。
カランから出るお湯が浴槽に溜まりだす。
その間、澄良は着替えを準備した。

「下着は新しいのがあるけぇ使って。服は新しくないけど洗濯しとるよ」

脱衣室のカゴの中に入れる。
お世話になりっぱなし。どうしようもない……。


「…澄良……ごめんね……」

情けない。自分が嫌になる……。

「いいよぉ!気にせんとって!」

すっかり大人な対応ができるようになった澄良が羨ましい。
それに比べると私は、まだ…てんで子供だ……。
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