…だから、キミを追いかけて
港の明かりが灯り始める。
防波堤の壁に沿って、等間隔の灯りが闇を照らす。

イカ釣り船の光が水平線上に点在する。
数は昔よりも減っている。
今の若いもんは、漁を嫌がる…と祖母が言っていた通りだ。


『日本の漁業は、滅びる運命にあるのかもしれんね』

祖父の17回忌の時に、そんな言葉を吐いた。
父は、祖父の真似をできなかった。

波に弱くて、沖にも出れない程、船酔いをしていた…。


『夕夏がジイちゃんの後を継いでくれ』

祖父は笑いながら言ったことがある。
私はその冗談を本気と受け取り、『任して!』と子供ながらに胸を叩いた。


ーー海が大好きだった。

祖父も…船も…イカ釣りの明かりも……


故郷の全てが……愛おしい時期があった………。



(……なのに、何でやろ。今は、全部が恨めしい……)


帰ってきたことを後悔してしまう…。



故郷の海は……



今もちっとも…変わらないのに………







「ーーおいっ!」

ゴツッ…と冷たい物が頭に当たった。

顔を上げる。


……またしても、コイツか。



「何よ。ほっといてって言うたやん!」

デリカシーが無さ過ぎる。
どうして、こうお節介なんだ…。

「ほっといてやるよ!俺はただ、夕涼みに来ただけや!」

ビールの缶を手渡される。

一つ隣りにある鎖止めに腰を下ろし、波留は自分の缶を開けた。

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