…だから、キミを追いかけて
慣れた口調で聞きそうになって、慌てて「ですか」を付け加えた。

前と同じになっている。いけない、いけない……。

「大丈夫……熱いお茶好きだから……」

知ってるだろう?って言い方。
忘れたいのに、今でも身についている。



「話って…何?」

自分から切り出そう。一刻も早くこの空間から抜け出す為にーーー。


彼が見つめる。
なかなか話しだそうとしない態度にイライラする。

別れる前と同じ空気。

残るんじゃなかったーーー。



「……話がないなら失礼します。これから食事の支度が始まりますので……」

慣れない着物の裾を気にしながら立ち上がろうとした。

「待って!」

祈る様な顔をされる。
その表情に弱い私を、この人はよく知っている。


仕方なく座布団に座りなおす。
向かい側に座っている航の口が、ゆっくりと開き始める。
その唇が押しだす音を、何の感情も持たずに聞いた。



「夕夏に会いに来たんだ。どうしても……顔が見たくて……」


目が潤みそうになる。

どうして泣きそうになるの。

泣きたいのは……泣いてきたのは……



(私の方なのにーーー)



「ここで…働いてるのか?」

何の為の確認?航には、もう関係もない。


「違う。今日だけのバイト。仕事はまだ……始めていない……」

情緒不安定と戦う日々。

それだけで精一杯の毎日ーーー。


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