…だから、キミを追いかけて
「そうか。バイトか」

ホッとした様子。
何が言いたいんだか。


「もういい?顔を見たんだから、満足でしょ⁉︎ 」

冷たくあしらう。
別れる前と同じ。あの時も優しくなんてできなかった…。


「失礼します」

立ち上がり、座布団を降りる。

向きを変えてドアへと急ぐ。
一緒に居たくない。
傷口が広がるだけだ……。




「夕夏っ!」

叫ぶ声にビクつく。

襖の取っ手に指をかけたまま、身動き一つできなくなった。


「仕事上がるのいつ?ゆっくり話したいんだけど……」

「知らない………分からない……」

話なんてしたくない。
傷つけ合うだけなら、しなくても一緒。


「私からは話なんてない。こんな所まで来られても、迷惑なだけ……」


どす黒い気持ちが胸の中を支配する。
どんどん嫌な自分になる

航といると……救われない。

底なしの海の中に引きずり込まれるように、不安ばかりが募っていくーーーー。




………小さく吐息をつかれた。


呆れてる?

私を?



「花火が上がり始めるのって、いつ?」

方向転換?
いきなり過ぎる。


「午後…8時45分から……」

例年通りなら…と言葉を添えた。

「だったら9時に待ってる。公園の入り口で」



「行かないよ。私」

サヨナラ…って言ったじゃん。
別れたんだよ。私達。


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