先生、ずっと愛してる。
「俺さ…彩音と出会う前は…」




咄嗟に聞きたくないと思った。




智希の過去の事。




聞きたいようで…聞きたくない。




智希は25にもなるんだから、それなりに女性の経験だってあるよ。




私にしてる事…キスしたり、抱きしめたり…




同じ事…してきたんだよね。




私だって、そうなんだから。




でも…嫌なんだよ。考えたくない…。




気付いたら、耳を塞いでた。




「彩音…俺、彩音にだけは聞いて欲しいんだよ」




「嫌!!聞きたくない!!」




「大丈夫だから…お願い。聞いて」




智希は私の手を、そっと握った。




「俺…彩音と出会う前は、けっこう遊んでたんだ。もう来る者拒まずって感じでさ…。本気で人を好きになった事なんか、1度もなかった」




智希の手が震えてる。




言いたくはない過去なはずなのに…私に話してくれてる。




真剣に受け止めよう。




私は、智希の手をギュッと握った。




「大丈夫。私…智希の過去もちゃんと受け止める。だから、何も隠さずに全部話して。」




智希の目には、涙が浮かんでる。




「あの頃は自分の性欲が満たされれば、女なんか誰でもよかったんだよ。親友の彼女にまで、手出したりしてさ…。でも、あいつ…自分の女取られたのに…俺に泣いて頼むんだよ。もう誰も傷つけないでくれってさ…。俺…そん時、やっと変わろうと思った。そいつ…今でも俺の親友やってんだ。友達の縁切られてもいい程の事をやったのに…。人を傷つけてるお前の姿…もう見たくないってさ…。」
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