桜の龍~誠の元に集う者~
 中学校生活は楽しく、めきめきと学力もついてクラスメイトから羨ましがられたなぁ~。
 あの事件が、起こるまでは。
 あれは確か、第一志望の高校に合格して入学準備に勤しんでいた、中3の学年末だったな。その日の稽古を終えて、胴着のまんま部屋のベッドに寝転んでボーッとしていたら、
 父「ぐあっ!」
 母「あなたっ、きゃあっ」
 いきなり、道場の方から父さんと母さんの悲鳴が響いた。
 歩「父さん、母さん?!」
二人の悲鳴に跳ね起きた私は、念のためと思い、居間の床の間に掛けてある伝家の宝刀・《龍煉》を腰に差し、道場ヘ駆けつけた。


 道場に駆けつけると、父さんが傷だらけになりながら肩から血を流している母さんを背後に庇い、木刀で複数の男と対峙していた。
 父「歩、逃げなさい!」
暗闇に紛れているが、今の私にはまるで手に取るように、敵の姿が見えていた。 数を把握する。 5人組か、愚か者が。
 男1「何だ、お前は?この二人の娘か?」
 男2 「中々の上玉じゃん。連れてく?」
 男3「いいねぇ、どんな声で鳴くのか、楽しみ」
 男たちの下品な笑い声に、ついに私の中にある何かが弾けた。
 歩「父さんと母さんに怪我させたな。許さない、私が全員纏めて、相手してやる」
 母「歩、止めなさい!」
母さんの説得も、まるで聞こえない。
 《龍煉》を引き抜き、その鋒を男達へと向けた。
 歩「・・・死ね!」
 その言葉を皮切りに道場中に暴風が吹き荒れ、髪は深紅と桜色のグラデーションに染まり、その頭には二本の角が生えた。



 そこからの記憶は朧気で、正気に戻った時には男達は気絶して転がっていて、父さんと母さんの怪我に応急措置を施して、警察と救急車を呼んだ。 でも男達は、半化けの私を見てこう言った。
 化け物だ、と。
 気が付けば、私の周りは暗闇に包まれ、今までの事が走馬灯のように蘇ってきた。
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