桜の龍~誠の元に集う者~
 店主「お侍様、連れの方は女性やないですか。貴女の様な方が剣を振るういう事は、やんごとない事情と相当な覚悟がおありなのですやろな」
 ここでいう“覚悟”とは、つまり人を斬るという事。さっき、成り行きとはいえ初めて人を斬ってしまった。でも、それがこれからの日常になる。『怖い』なんて、寝言を言ってる場合では無い。
 歩「えぇ。この国の為に剣を捧げる覚悟です」
 店主「分かりました。では、貴女様に合いそうな大小と薙刀をいくつか、身繕いましょか。長さの希望はありまっか?」
 歩「全長が、三尺八寸の物をお願いいたします」
  (一般的に、高校生以上の女性が使う竹刀の全長は、三尺八寸と決まっているそうです。by 作者)



 そして、約30分後。
 歩「う~ん・・・こっちは重すぎだし、かといってこっちは少し軽すぎだし・・・」
私は自分の刀選びに四苦八苦していた。薙刀は案外早く手頃な物が見つかったけど、刀の方がどうもしっくり来るのが見付からない。
 すると、ある一振りの刀が私の視界に入ってきた。刀の鞘には美しい桜と龍が描かれ、柄の先端には深い藍色の飾り房の根付が付いている。自然とその刀を手に取った私を見た店主が言った。
 店主「その刀は今まで何人ものお客さまが貴女様と同じように購入しようしましたが、何をどうやっても抜けへんのどす」
 抜けない?面白い。なら私も抜いてみるかな?という訳で早速抜いてみる事にした。刀の鐔を左手で押して、そのままゆっくりと引き抜く。抜けないとか言ってた割には、拍子抜けしそうなくらい簡単に抜けた。それに、重さも丁度いい。
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