桜の龍~誠の元に集う者~
 歩「そして・・・次の年の夏に年号が変わり、元治元年・6月5日未明に起きた事件をきっかけに、壬生浪士組は一気に歴史の表舞台に出ます。因み、私の時代の人が壬生浪士と聞くとこの事件と答える人もざらにいます」
 斎「ある事件?」
 気になるわな~そりゃ。
 歩「三条小橋にある旅籠・『池田屋』で会合を開いていた尊皇派の浪士約20人を、一網打尽にするんです」
 土「どうやって、それを突き止めた?」
う~ん、本人の前だから非常に言いにくい。
 歩「実は・・・この事件の前日、薪炭商『桝屋』の主・桝屋喜右衛門を言い方が悪いですけど取っ捕まえて、土方さんが鬼さながらの拷問で自白させました」
 平「うげー、流石は鬼副長」
 土「・・・で、自白の内容は?」
 歩「ぶっちゃけると、祇園会前の風が強い夜を狙って京の都へ火を放ち、その混乱に乗じて会津公・一橋様・中川宮様を暗殺、天子様を長州へ誘拐するという内容でした」
 ・・・と、その後の史実を出来るだけ分かりやすく説明した。説明が終わると、気まずさから沈黙が落ちた。
 沖「それが、僕達の結末なんだね・・・」
 山「なんという事でしょう・・・」
 歩「大丈夫です。私が皆さんを歴史の荒波から救ってみせます!そのための知識も力もあります!先程も言いましたが、私は人の子ではありませんから」
 彼らにだったら、話せる気がする・・・。自分の秘密を。
 近「人の子ではないというのは、どういう意味かね?」
 歩「To see is to believe. つまり、百聞は一見に如かず。これからお見せします。皆さん、縁側に出て下さい」
 そう言って、私は縁側から中庭に出る。自分のもう1つの姿を見せるために・・・。
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