桜の龍~誠の元に集う者~
 原「驚いたな、話せるのか」
 歩「そうした方が、後々で都合がいいかなーなんちゃって」
 そこまで言いかけた時だった。
 ?「・・・何の都合がいいのだ?」
聞き慣れない声と一緒に二人分の気配。片方は芹沢の様だが、もう一人は分からない。今、この状況を見られたらマズイ。そう思った私は、とっさに両手を打ち合わせる。
 パンッ! 歩「式神達、隠れなさい!」
 私の言霊を合図に、式神達は一斉に形代へ戻り、幹部の着物の懐や袖の袂に潜り込んだ。
 芹「おぉ、全員そろっておるのか。・・・先日ぶりじゃな、渡辺」
よーし、仕事モードスイッチON !
 歩「はっ。芹沢先生も、お元気そうで何よりにございます」
 やって来たのは、芹沢と見たこと無いノッポさんだった。
 ?「芹沢先生、あの者は一体?」
ノッポさんが、芹沢に問う。
 芹「そうか、新見は初めてじゃったな。あやつは半月前に入隊し、副長助勤と一番組副組長の任を受けた渡辺じゃ。渡辺、こやつは新見 錦(にいみ にしき)。土方や山南と同じ副長じゃ」
副長って事は、私の上司か。自己紹介しないとな。
 錦「新見だ。よろしくな」
 歩「渡辺歩夢と申します。以後、お見知り置きの程を・・・」




 芹「今日はお前達に火急の要件があって、参ったのだ」
 座るなり、芹沢は話し始めた。
 近「火急・・・というと?」
芹沢と新見は目を合わせてから、口火を切った。
 錦「大坂に我等の名を騙り、人斬りをしている不届きな輩がいるらしいのだ」
 やっぱりか。予感がバッチリ当たるとか、笑いを通り越して溜め息が出るわい。
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