桜の龍~誠の元に集う者~
 総「『桜花龍』?」
 歩「私の刀の名前。妖刀らしいけど」
 『桜花龍』の柄を撫でると、藍色の房飾りがリズムを取るように揺れる。
 歩「斬り合いは、いつも薙刀だからさ」
 総「なるほど。ねぇ、ちょっと見てもいい?」
えっ、本気?
 歩「この刀を手にした時、刀屋の主人が『今まで、引き抜けた者はいなかった』って言ってたからな。総司に引き抜けるかどうか」
 総「つまり、主を自分で決めるって訳か。この刀」
 歩「そうみたい。なら、引き抜いてから見せようか?」
 総「お願い」
 腰に差した『桜花龍』を鞘ごと外してから引き抜き、白刃を自分に向けて総司に渡す。
 歩「はい」
 総「ありがと」
刀身を様々な角度から、しげしげと眺める。
 総「綺麗な刀だね。切れ味良さそう」
 歩「こまめに、手入れしてるから」
 総「ふーん。返すから、鞘を頂戴」
 どうやら『桜花龍』は、戻す時は、誰でもいいらしい。すっと鞘に戻る。
 歩「どうも」
『桜花龍』を受け取り、腰に差し直す。
 


 総「これで、よし!」
 荷造りが終わり、総司は思いきり伸びをする。
 歩「あっ・・・そうだ。式、出ておいで」
 すると、総司の着物の懐から形代が飛び出し、青白い光を放ちながら白い牡鹿の姿になった。
 総「そういえば式神って、どう呼び出すの?」
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