桜の龍~誠の元に集う者~
 そんな毎日が四日程続いたある日、大坂の不届き者を無事に成敗した出張組が、屯所へ帰って来た。
 総「ただいま」
 歩「お帰りなさい。お疲れ様です」
見送りと同様、総出でお出迎えです。
 一「部下の面倒をまとめて頼んでしまって、すまない」
 新「本当に悪かった、歩夢!」
 歩「気にしないで下さい。指導は私の十八番ですから」
 総「歩夢君の立場って、僕と同じなんだよね。流派は違うだけで」
 そういえば、総司も浪士組に入る前は多摩にある天然理心流の道場・『試衛館』の塾頭として、近藤さんや土方さんと一緒に門弟の指導してたんだよね。
 歩「まぁ・・・ここで立ち話もアレですし、別の場所で幹部の皆さんと話しませんか?」
 新「そうだな。土産話とか、色々あるし」
 一「では、俺が局長達を呼んでこよう」
 歩「なら私が・・・」
 そういうのは、一番年下の役目じゃ。
 総「君には様々な面倒事を頼んだからね。ここは一君に任せよ?」
 歩「ですが、お三方」
 一「構わぬ。先に行け」
 新「斎藤がああ言ってんだ。早く広間へ行こうぜ!」
 歩「わぁっ」
 私は何故か総司と新八さんに背中をグイグイと押され、問答無用と言わんばかりに広間へ連行された。
 



 土「ほーぅ、大坂でそんな事があったのか」
 歩「楽しそうですね」
 新「おぅ。流石、“天下の台所”と言われるだけはあるぜ。人も町も江戸や京の次くらいに活気づいててな!」
 歩「それはそうですよ。江戸と大坂、京は私の時代の本には三都って書いてありましたからね」
 歴史の教科書でしか見たことが無い大坂の景色を思い描きながら、出張組の土産話を聞いていた私だった。
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