桜の龍~誠の元に集う者~
 土「今、山崎と陽炎が見張ってる。直に報告が来る筈なんだが・・・」
その時だった。不意に頭上からバサリという鳥の羽音が聞こえ、振り替えってみるとそこにいたのは、一羽の白い鷺。山崎さんの式・陽炎だ。
 陽『全員、眠りました。芹沢とお梅は母屋の奥座敷、ほかの助勤は母屋の離れです』
 歩「ご苦労。主の元へ戻れ」
 陽『はっ、では失礼します』
 陽炎が飛び去って行くと、誰が誰を討つのかの打ち合わせが始まった。 こういう時は、土方さんや山南さんに指示を仰ぐのがいいらしい。
 土「原田と平助・山南さんは離れを。総司と渡辺は俺と母屋だ」
 前川邸に着くと裏口から中庭へ侵入し、離れの二人と別行動をとり、近くの茂みに隠れて中の様子を伺う。
 歩「本当に・・・寝てるみたいですね~」
 土「みてぇだな。静かすぎだぜ」
 総「しーっ。二人共、静かに」
 小声でこそ泥よろしく足音を殺して奥座敷に通じる襖に近付き、刀の柄に手をかける。
 土「渡辺。この襖、ぶち抜けるか?」
 歩「派手にやっても、いいのであれば」
 土「構わねぇ。思い切りやれ」
では、遠慮なく♪ 少し下がって足音を消したまま一気に助走をつけ、目の前の襖を目掛けて、カンフーの達人顔負けの跳び蹴りをお見舞いする。
 ドンガラガシャーン!
 歩「よっ・・・と!」
 平助を真似て、空中で一回転し着地と同時に、抜刀する。
 総「うわっ。本当に派手に行ったよ、この子」
という、総司の呟きが聞こえたが、この際は気にしない事にしよう。
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