桜の龍~誠の元に集う者~
 [土方side ]
 「おい、しっかりしろ!」
 怒鳴ろうが、頬を叩こうが全く起きる気配がねぇ。 俺がコイツの部屋へ連れていってもいいんだが、そんな事すると人目に付くしな・・・。 しょうがねぇ、一先ず寝かしとくか。 そこへ、平助が斎藤とやって来た。
 一「副長。総司が、“巡察の刻限なのに、副組長である歩が来ない”と言っているのですが・・・歩?!」
 平「おい、大丈夫か?!」
歩を見た途端、仰天した斎藤と平助。
 「馬鹿野郎!静かにしねぇか!」
 渡辺をウッカリ起こしちまわないよう、小声で二人を叱り飛ばす。
 平「なぁ土方さん。どうしちまったんだよ、歩?」
 「体調を崩して倒れちまった。平助、山崎を呼びに行きがてら、冷やす物を持ってこい」
 平「お、おぅ」
 「渡辺は、ここで寝かせる。斎藤、総司にこの事と帰りに薬を買ってくるように伝えろ」
 一「承知しました。しかし副長、何故に歩をここで寝かせるのです?」
 「万が一、新八に騒がれてみろ。治るモノも治らねぇよ」
 一「なるほど・・・、承知しました。平助、行くぞ」






 崎「風邪やな。ここ最近の疲れが、昨夜の雨を引き金にしてどっと出てしもうたんやろ」
 平「そうだよな。普段、あれだけ動き回ってるのに、疲れが溜まらないなんて、あり得ねぇしな」
 山崎と平助の言う通りだ。 ただでさえ総司の荒稽古に付き合ってるのに、炊事に洗濯もこなしつつ、未来の知識を使って近藤さんや山南さんの相談相手を務めたり、最近は俺とコイツの筆跡がよく似ていると分かって公文書の幾つかを、代わりに書いて貰ったりもしている。
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