あした、地球に星が降る。

『リョウコさん、置いてかないでください……! 俺がリョウコさんにウエディングドレス着せるって約束、まだ……っ』


彼氏も来てくれているらしい。 一人前になるまでもう少し待ってくださいと顔を赤らめて結婚を約束してくれた、私の愛しい彼氏。


『リョウコ、リョウコ! 嫌だよ、リョウコがいなくなったら私、私……!』


あらあら、親友も私の危篤に駆けつけてくれたみたいだ。 お腹が大きいのに、急いで来ちゃって。ありがとう。


みんな、みんな、来てくれてるのね。 ああ、私はなんて幸せな人間なんだろう。なんて恵まれた人生だったんだろう。


そりゃあ欲を言ってしまえばキリがない。 自分が働いたお金で家族旅行なんてのもしてあげたかったし、ウエディングドレスも着たかった。 つい最近授かったばかりの親友の子どもだって、抱っこしてみたかった。

もっともっと、みんなと生きたかった。


だけど、辛かったことと幸せだった思い出を天秤にかけてみたら、辛かったことなんて吹っ飛んでいっちゃうくらい、幸せな思い出の方がずっとずっと重たいの。


もし心残りがあるとすれば、そうだな。 大切な人たちを置いていってしまうことと……終わらせることができなかった、未完結の小説。
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