あした、地球に星が降る。
病院の窓から見る景色が羨ましくて妬ましくて惨めになったときは、人の幸せを願える男の子の話を。 高校のときの甘酸っぱい初恋を思い出したくなったときは、制服に身を包んだもどかしい男女を。
他にもたくさん、いろんな子たちを生み出してきた。 素人が趣味で書く程度の拙いものばかりだったけれど、どれも納得がいくまで書き直し完結させた。
だけど、私が最期に書こうと文字を綴ったあの子のお話だけは今もまだ終わらずに、あのノートで私を待っている。
たしか、ずっと勉強ばかりしてきた中学生の女の子が主人公だった。
受験を前に家族とケンカしてしまい、家を飛び出すが、勉強ばかりしてきたその子には他に頼れる友人も恋人もいない。 何もかもうまくいかない。 お話はそんな風にはじまっていたはずだ。
書き始めたばかりで全く進められなかったあのお話の女の子は、家族とケンカをして、家を飛び出し海に走った。 たしかそこで途切れてしまっているはずだ。
唯一自分を理解してくれていた家族とはすれ違ったまま。 そして、恋に落ちるはずだったヒーローとも出逢えないまま。
あの女の子は、時計の進まない世界で、今もあの暗くて寂しい海辺から動けないでいるのだろうか。