あした、地球に星が降る。
ゲームオーバーと書かれたスマホの画面。ユキの指は〝リトライ〟のほうにわずかに揺れてから、結局〝やめる〟を選択した。
何気ない仕草だったのかもしれないけれど、少し胸が苦しかった。
「だからみんな、狂ったりしないよ」
ユキが僕を見て小さく笑う。
「なーんにも変わんない。昨日までと同じ今日」
「ユキ、」
「証拠にほら、あしたが最期だっていうのに友達だった人も同じ血を分けた人間も、誰ひとりユキになんか電話してこないの」
二年前からずっと変わらないユキのスマホ。電話番号だって、メールアドレスだって変わっていない。
でも僕はこの二年間、ユキがこのスマホをゲームか僕に連絡する以外のことに使うのを見たことがない。 実際、それ以外に使っていないんだろう。
「この二年間、ユキにはハルちゃんだけだったよ」
「……そんなことないだろ」
「ほとんどこの部屋から出てないのに?」
誰にも会ってないよ、ハルちゃん以外。そう言っておかしそうに笑うユキは、今にも泣き出しそうに見えた。
僕の勘違いだったらいいのに。そう思いながら俺は、ユキの目をそっと手のひらで覆って「ごめん」と小さく呟いた。