お前、可愛すぎてムカつく。
颯太先輩の名前を聞いて思い出した。
今朝の颯太先輩のあの目…
冷酷な瞳で、ドキドキした。
あの優しかった頃の先輩は、もうどこにもいない。
私よりも、蒼空に何も害がないといいんだけど…。
あ、自然に蒼空って呼べてる。
「あと…他の女子から色々言われるかもしんねぇけど…」
「うん。覚悟してる」
「なんかされたらすぐ言えよ?」
蒼空がそんなこと言うなんて…
今までじゃ考えられないことだった。
彼女になると、こうも変わっちゃうのかな。
あの腹黒さはどこへいってしまったんだろう。
「つーかもうこんな時間じゃん」
時計を見ると5時過ぎていた。
「ほんとだー!」
「帰るか」
蒼空は立ち上がって自分のカバンと、私のカバンを持った。
「えっいいよ!?」
「いーから」
そう言って、私の手をとる。
蒼空って意外に紳士的なんだな…
調子が狂う。
いつもみたいにムカつくこと言ってきたり、バカにしてくれた方がいいかもなんて思ってしまう。
でも繋いだ手が温かくて…
ぎゅっと握ってくれるのが嬉しかった。