【短】花火の夜に
「どうしたの?」
「まだウタの途中なのに…」
お客さんの声が聞こえる
「すみません!今日のライブはこれで中止にして下さい!本当にすみません」
オレは頭を下げて すぐにギターを片付けた
今 オレは歌ってる場合じゃねぇ
「あの子の所に行くの?」
「えっ?」
今にも走り出しそうなオレにお客さんの若い女が聞いてきた
「あの子の所に行くんでしょ?」
「…すみません」
「ただの…ただのファンのうちの1人でしょう!?」
まわりから見れは確かにそうだ
だけどオレにとっては…
「オレのファンである前に オレにとって大事な奴なんです」
「……そう」
「すみません」
「来週も…」
「はい?」
「来週も同じ時間でいいの?」
「…はい!」
「じゃあ 来週また来るわ!」
「ありがとうございます!」
「…早く行ってあげて?」
「はいっ!失礼します」
ホントに良いお客さんを持ったな
オレはあいつの消えて行った方向に走った