私情。
「天音さん、今日泊まっていい?」
なんの気なしにそう聞くと、
天音さんは振り向いて、
「天音でいい。」
と無愛想に言った。
「んー、恥ずかしいかも。」
「好きに呼んでいいよ。」
「じゃあ、あーちゃんって呼ぶね。」
はしゃぐ私を横目に、あーちゃんは携帯を触る。
しばらくしてあーちゃんは口を開いた。
「今日彼女くるから、おまえ帰れ。」
冷たいともとれる、
あーちゃんの言葉。
「うん、わかった。また来るね。」
そして、いたって普通で、
そしてそれは異質な会話。
あーちゃんは、
私を愛さない。
あーちゃんの家を出て、徒歩五分の所に公園がある。
ベンチと砂場と滑り台、それからブランコをおいた、無駄に広い公園。
夕方6時。
誰もいないなんて、少し寂しい気もするけれど。
ベンチに腰をかけて、ボーッと空を見た。もう薄暗い。時が経つのは早い。あんなに暑苦しかったはずの昼間も、夜になれば優しい風が包んでくれていた。
これからはもう、
冷たい追い風にかわる。