私情。
「本当、おまえ頭弱いの?」
あーちゃんの言葉に飛び起きて、体にかけられたすこし厚手のパーカーと、タバコの臭いに気づく。
「え、え?」
あたりを見渡して、伸ばした足元に座ってる彼を見る。
「えじゃねえよ。彼女送り届けた帰り。こんなとこで寝てたらさすがに呆れるだろ。」
「ごめん…。」
ブルッと体が震えた。
風も空気も冷たい。
あーちゃんはすぐ心配をする。
勘違いさせてくれるだけ、優しいのかな。きっと彼はどんどん私に興味もなくなって、記憶も全て褪せてって。
あーちゃん、ごめんね。
あーちゃん、好きだよ。
もう、時間がない。
側にいてくれる今、
すごく甘えたくて仕方なくて、愛してると伝えたくて。
でも。
頻繁な吐き気にぐっと唇を噛む。
「あーちゃん、好き。」
「知ってる。」
あーちゃんは、うん、俺も。とか、
好きだよなんて絶対に言わない。