私情。
不透明な感情。
ドロドロとにごった。
いや、そこまでじゃないのかな。
案外落ち着いている。
傷つくのは私じゃない。
恋人。
恋人だなんて歌ったけれど、
そんなこともない。
好きになってくれたらだなんて、そんな都合いい言葉に甘えようとした。
私はあーちゃんと変わらない。
吐き気と、胃の痛み。
ごめんねも言えないくらい、
声も聞こえないくらいの静けさに襲われて、あーちゃんに頭をポンと叩かれて我に帰る。
はいと電話を渡されて、
見てみるとまだ繋がっている。
恐る恐る耳を当てる。
「もしもし…?」
震えて返す私の声に、
彼はごめんねと返して、
明日会おうと零した。
ファミレスで落ち合う約束をして、
適当に切った。
「何その顔。」
「え…?」
あーちゃんに言われて、顔を上げる。
「会話、聞いてなかったの?」
「何も…聞こえてなかった。音が何も聞こえなくなって、さっき頭に手を置かれるまで、何も…。」
「そっか。」
「う、ん…。」
「明日、お気をつけて。」
無機質な空の色。
明かりが灯り始める。
カバンに入っていたチョコレートを、
ポンと口に入れた。
熱で柔らかくなっていて、
生チョコみたいで、口の中で溶ける。
濃厚すぎて喉が焼ける。
この時間に男と二人。
その時点で確実におかしいだろう。
何を話したかは知らないけれど、
どうせ、ろくな内容じゃない。
謝るほかない。
謝っても許してもらえることじゃない。
だけど、このままでいるつもりもなかった。
泣くのは、私じゃない。