私情。
あーちゃんは布団に入って私に背を向けた。
しばらく床に座り込んで、ぽーっと適当な一点を見つめる。
どんどんと明るくなる空に怖くなって、
逃げるように部屋を出ようとした。
走り出したくて、
だけどそれもどれもこれも、
不確かだったから。
階段を下りようとして、
もう一度あーちゃんの顔を見に戻る。
訳のわからない、
突発的なごめんねを放って、そしたら涙が出たから慌てて走り出した。
階段から転げ落ちれたらなんて、
そんなこと思ってるはずなのに足はちゃんと動く。もつれたりなんかしない。
勢いよくこの家を出て振り向いて玄関を見る。
どれもこれも、あやふやだ。
怖い。
だから振り切るように走った。
今踏み込む足場だって、
いつ崩れるか、この後すぐ崩れるかもしれない、私の歩いた道から徐々に崩れて、逃げ場は失われるのかもしれない。
なのに。
息は切れる。
鳥が鳴き始める。
まだ少し蝉がチリチリと鳴く。
まだ、ファミレスもやってないのに。
何を求めているんだろう。
愛せないとか、
泣くのは自分じゃないだとか、
ありきたりな言葉が脳内を埋め尽くす。
本当に呆れるくらい、
後悔するよりもさせてしまう、
馬鹿な話。