私情。
「放置…ですか…?」
「…はい。」
力強く頷く私に、
医者は驚きを隠せないようだった。
それもそうだろう。
ここは生きたい人が来る場所。
人の命をながらえさせる場所。
「そんなこと…このまま放っておくなんてそんな無茶なことはやめなさい。今のうちにとってしまえば、抗ガン剤の副作用もなにも、そんなに強くないうちに済みますから。」
「死ぬという、目標のために。今なら生きれそうな気がしました。」
そう言うと、医者は首をかしげる。
「今はまだ若さからなのか。この日常が腐るほど長い気がして、生きていたくなくて。いつでも死ねる。そう思いながら、逃げ道を確信しながら頑張って生きたつもりでした。それももう、限界な気がして。」
「精神、ですか。」
「はい。ひとまとめにすれば、きっとそうなんでしょうし、そう言う病院に行けば確実になんかしらの病名がつけられるだろうなって、そんなのもわかっていて尚。ダメでした。
死ねる。その目標?ですかね。それがあるなら、生きていける気がするんです。どうか。前向きに考えさせてはくれませんか。」
医者は深いため息をついて、
そうは言ってもと何かを言いかけた。
そして、
「一月。あなたは若い。進行も早い。体に無理も出てくる。一月の猶予を与えます。最低でも一月。その中でもう一度よく考えてください。」
いつ来ても構わないし、だけど、
一月後には結論をとのことだった。
一通り話すと、
白衣をまとった白髪頭の医者はまたため息をついて、お待ちしてますとだけ言った。
あれから、3週間が経とうとしている。