私情。
罪悪感。
2人で道を歩いて、
それはとってもこそばゆくて。
幸せなんて、長く続かない。
そうわかっていてもなお、
この状況に甘えてしまう自分がいた。
好きと嫌いはすぐそばに置いてあって、
光も闇も同時に存在していて。
世界が。
世間が私を悪だというのも、
それはもうわかりきっていた。
だれがどう見たって、
悪いのは私だ。
「あーちゃん、夕日きれいだね。」
「おう。」
「あーちゃん。」
「ん?」
「この夕焼けに染まる街のどこか片隅に、例えばビルの隅に。小さな花が咲いていたとして。」
「おう。」
「あーちゃんは、そこでどんなことを考える?」
対して、質問に意味もなく。
だけどどこか寂しくなって、
口を動かした。
「俺は…隣に座って煙草を吸う、かな。」
「なんで…?」
「なんでってそりゃあ、摘むなんてできやしないし。ただ、そこにあるだけならさ。隣にいれば俺の記憶には残ってほんの少しの幸せになる気もしたし。偽善じみてるかね。」
そう言って笑うあーちゃんにただ、
「やっぱり優しいね。」
なんて、笑って返した。
あなたの抱える弱さ。
あなたの抱える優しさ。
あなたの奏でる音。
そういう全てを。
愛してしまったから。
「おい。」
「え…?」
あーちゃんは私の腕を掴むと、
自分の方へ体を向かせた。
「どこにも、行かないよな。」
そんな、きっとなにも知りはしないはずの言葉に胸がチクっといたんで、だからこそ笑って。
「あーちゃん、見てよ。世界はこんなにきれいだよ。夕日はこんなに優しい。だけどそれは時として残酷だよね。」
「ん…。」
「この空に溶けることができたら、どれだけいいんだろう。」
「風香…?」
「なんて、さ。あーちゃん、歩こ?」
そう言って、そっと手を外すように促した。
あーちゃん。
私が戻って3ヶ月。
黙っていてごめんね。
その間の一月を、
ずっと隠しながら。
笑いながら生きてる自分も、
健気な自分も嫌いじゃないからさ。
エゴだってわかってる。
でもあなたには、
素敵な彼女さんがいて。
自分に酔う振りをしないと、
私は私でなくなってしまう。
嫌われるのだけは避けたくて、
そっと笑い続けた。
黙っていればなにも。
きっとわかりはしないから。