私情。
「あの、ごめんなさい………なんでおまえがって、おもいますよね、ほんとごめんなさい…………」
つっかえながらそういうと、
彼女は両手で鼻を隠すようにぽろぽろと泣き出した。
目を思い切り押し当てたり、
強く拭ったり。
それだけでは収まらないらしく、
だけれど泣きわめくわけでもない。
声を押し殺しながら。
でもそれはわざとではなく、
きっと癖でその人そのものなんだろうと思えるくらいには、失礼なことかもしれないのだけれど気づけば、見とれてしまっていた。
純粋無垢な子供のように、本当に、ぽろぽろと。
例えるなら本当に、
百合の花のような。
ああ、この人は本当に。
弱くて凛として聡明で、
何より本当に、素敵な人だ。
と。そう、思ってしまった。
そして、
そう色々な考えを張り巡らすと同時に。
抱きしめてしまっていた。