黄泉の本屋さん
「徳永さんが、今まで歩いてきた記憶です。こんなにもたくさんの思い出があるんですね」
「・・・うるさい」
眉を寄せ、ぶっきら棒にそう言われた。
でも、少し頬が赤いのに気付いて、照れてるんだとわかる。
照れ屋、なのかもしれない。
うまく、そういうのを表せないのかもしれないな。
「記憶のかけらここに戻りし、在るべき場所に戻ることを契約者浅葱が命ずる。想起(そうき)!」
たくさんの万年筆が、光を放ち徳永さんの中に消える。
徳永さんはしばらく黙りこみ目を閉じていた。
戻ってきた記憶を確かめているんだろうか。
「俺は、俺は最後まで・・・あいつに、口うるさく言ってしまった」
吐き出すように徳永さんは言うとゆっくりと瞳を開いた。
心残りを、思い出したんだろうか。
「心残り、思い出しました?」
「・・・ああ」
「じゃあ、できる限り協力するので、その心残りを晴らしに行きましょう」