黄泉の本屋さん
「いい」
私の言葉に、徳永さんは短くそう答えた。
いいって、どういうこと?
「徳永さん?」
「今更、どうすることもできん。記憶が戻れば成仏はできるんだろう?」
「強制的に送ることは確かにできます。ですが、黄泉屋書店はできるだけ皆さんの心残りを晴らすお手伝いをするところです」
「いいと言っている」
「ですが、一度成仏してしまえばその未練は晴らすことは叶わなくなりますよ。いずれは、転生へと道を進んでいきます。ですが・・・、それでいいんですか?よくないからこの世にとどまっていらしたんでしょう?その未練さえ忘れてしまうような長い時間を」
浅葱が、真剣に訴える。
やっぱり、浅葱は優しいよ。
私の事を褒めてくれたけど、浅葱だって十分霊のために頑張ってる。
救おうと、努力してる。
「せめて、事情を話してくれませんか?」
「・・・話してどうなる」
「話せば、それだけでも少しはスッキリするでしょう」
「・・・話したところで」
「あなたの人生は、結局本になって後から僕に読まれることになるんです。だったら、自分で話しておいた方がよくありませんか?」
「・・・っわ、わかった。話す」
す、すごい。
荒業だけど、話す気にさせるなんて。
さすが浅葱。