黄泉の本屋さん


「私は、神ですが、時々霊体になり地上へ遊びに行っていたんです」

「霊体になって?」

「神の姿で行くと、いろいろなものを引き寄せてしまうのでね」



救われようと寄ってくる霊もいるんだろうか。
私はそのまま、暁の話の続きを聞く。


「そうやって、地上に降り遊んでいたある日、私はとある場所に迷い込んで出れなくなってしまったんです」

「とある場所?」

「盛り塩がされてある場所ですね。霊体だと、近づけなくなってしまうんですよ」





うっかりそんなところに迷い込んでしまったなんて、暁もそこそこおっちょこちょいなのかしら。




「そんな時、浅葱がその場所から助け出してくれたんです。それだけのことでしたけど、私にとってはとても救いでした。そうして抜け出していたことも本当はいけないことだったので」

「こっそり抜け出してたんだ」

「ですから・・・、浅葱が悪霊に憑かれ死んでしまったことを知り、その上その魂まで奈落に引きずり込まれそうになっていて、放っておけませんでした。本来神の力を譲渡することはご法度でしたが、私は何としても浅葱を助けたかった」




自分を助けてくれた恩人。
命こそ護ってはやれなかったけど、せめてその魂だけは。




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