黄泉の本屋さん
記憶
浅葱が目を覚ましたのは、次の日だった。
「浅葱!目を覚ました?」
何度か目を瞬いて、ぼんやりしている浅葱を覗き込む。
もしかして、私の事忘れてしまったんだろうか。
そんな不安を過ぎらせながら、浅葱の反応を待った。
「奏音さん・・・」
浅葱の口から紡がれた自分の名前にホッとする。
覚えていてくれたんだ。
「浅葱、わかる?ここ、黄泉屋書店だよ」
「はい・・・。覚えています。すべて。そして、自分が何者だったのか、どうしてここにいるのかも、全部・・・」
浅葱の瞳が切なげに揺れた。
動揺するのは仕方ないよね。
悪霊に騙されて死んじゃったなんて。
その記憶さえ、忘れてしまっていたなんて。