黄泉の本屋さん
「大丈夫?」
「う、うん・・・。落ち着いた」
いつもより長引いた頭痛は、しばらくして落ち着いた。
私は小さく深呼吸をして顔を上げる。
「奏音さん、その頭痛はね、奏音さんが記憶を思い出すことを拒んでいるってことなんだよ」
「え・・・?」
「奏音さんは、おそらくすでに記憶を取り戻しかけている。でも、それを奏音さんの心が拒んでいるんだ」
「記憶って・・・」
やっぱり、私には忘れている記憶があるってことなの?
忘れている事すら忘れてる。
そんな記憶が・・・。
でも、その記憶を、私自身が拒否している。
どんな記憶なんだろう。
思い出したくないような、そんな記憶なの?
「でも、奏音さん。奏音さんはその記憶と向き合わなくてはいけません。ちゃんと記憶を取り戻し、奏音さんのいるべき場所に戻らないと」
「でも・・・、忘れていたいような記憶なんでしょう?私、そんな記憶戻ってほしくない」
怖い。
そう思うのは、当然でしょう?