黄泉の本屋さん
「とにかく、腹ごしらえをしようか」
「はい」
「暁ー」
浅葱は暁を呼びながら奥に引っ込んでしまった。
残されたのは、私一人。
夢じゃない。
これは、現実で。
真実だ。
そう、考えてみても、ピンとこなくて。
胸が重い。
浅葱が嘘を言っているようには見えなかった。
信じるべきだと、わかる。
それでも、心はそれを拒んでる。
信じたくなくて。
簡単に信じて、元の生活に戻れるように頑張ろうなんて思えるほど単純にはできていないし。
全てを疑って此処を飛び出す勇気もない。
全てが中途半端。
優しそうな浅葱の側にいたら、安心だろうか。
あの人を信用してついていれば、いいのだろうか。
あの優しい瞳には、人を惹きつける魅力がある。
儚げで、どこか切なく思えるその姿。
まだ、彼のこともわからないことだらけだ。