黄泉の本屋さん
逢ノ章
黄泉屋書店
「奏音(かのん)!待って、お弁当!」
後ろから聞こえた声に靴を履きながら振り返る。
お母さんがお弁当袋を掲げながら追ってきていた。
「あ、わすれてた」
「もう、しっかりしなさい。ほら」
「うん、ありがとう」
優しい笑顔を向けられ、私も笑う。
お弁当を受け取り玄関の扉を開けた。
「待て待て、奏音。お父さんも行くから、途中まで一緒に行こう」
「えー、・・・仕方ないなぁ。早くしてよー」
その後ろから、お父さんが慌てて現れた。
お父さんは電車通勤だから駅まで一緒なんだ。
駅からは逆方向の電車に乗る。
だから、時々こうして駅まで一緒に行っている。
「お父さん、早く!」
「わかってる、待ってくれよ」
のろのろと靴を履くお父さんを急かしながら外に出た。