黄泉の本屋さん
「僕たちは、あそこまでは普通はしないんだ。側で今の姿を見せるくらいで。あの人の場合は、それで満足してくれていたと思うから。そうじゃなくても、僕が姿を現して、生きてる人間とやり取りをするなんて、絶対にない」
「そう、なの・・・?」
「そこまで、深入りはしない」
「でも、じゃあどうして手を貸してくれたの?」
確かに、いちいち深入りしていたら大変なのかもしれない。
それでも・・・、あの時、私はああしたかった。
少しでも、亜紀さんの現在(いま)の気持ちを黒瀬さんに伝えたかった。
亜紀さんのためじゃない。
黒瀬さんのために。
「亜紀さんのためじゃなくて、黒瀬さんのために動こうとしていたから。もし、亜紀さんの気分を晴らすために動こうとしていたのなら、僕は手は貸さなかった」
「・・・だって、亜紀さんには旦那さんもいて、生きていて・・・私が動かなくても平気だと思ったから」
「うん。僕らの仕事は、彷徨える魂のためのものだからね。そのために、動いてあそこまで黒瀬さんを満足させられた奏音さんは、とてもすごいと思うよ」
褒められた・・・。
う、嬉しい。
涙も引っ込み、じわじわと喜びがあふれ出る。