めんどくさがり系女子の恋愛事情
青山さんの言葉はまだ続く。
「先生から聞いたけど、あなたの家庭ってちょっと複雑みたいね。
家に帰ったらあなたが暴力を受ける番みたいだし。
その苦しみや悲しみ、痛みを宮田さんにぶつけてたんだね。」
「な、なんでそのことを…。」
動揺していることが隠しきれない女。
全然知らなかった。
いや、知ろうとも思わなかった。
私がいじめられてるように、あの女も誰かから暴力を受けていたんだ…
「まぁ、だからと言っていじめていい理由にはならないけど。
とりあえず、お互い傷つくだけの無駄なことなんて
いい加減やめたら?」
「…っ。」
誰も何も言えなかった。
私がいじめられてるのは私の問題だと思ってた。
でも違ったんだね。
彼女も一人で苦しんでいたんだね。
「これからは誰かを傷つけるんじゃなくて
痛いときは痛いって叫べばいいんじゃない。」
「そんなこと言ったって誰も聞いてくれないじゃん…。」
「それじゃあなたの隣にいる人たちは友達じゃないの。
飾り?アクセサリー?それともいじめのための道具?
…違うでしょ。
何のための友達なわけ?」
リーダー格女子ははっとした表情をし、周りにいる子たちを見た。
その子たちは泣きながらうんうんと頷いていた。
彼女たちもリーダー格女子が苦しんでることを知らなかったのだろう。
でも彼女を支えてあげる気持ちはあるようだった。
「みんな……ありがとう。」
号泣してるから何言ってるかわかりにくかったけど、ちゃんと伝わった。
教室の空気はだんだんと軽やかなものになっていた。
不思議だ、さっきまであんなに辛かったのに。
少しだけ心が温かい。
「じゃあ、二人は仲直りの握手。
今後もういじめはなしね。」
「…うん。」
青山さんの言葉を聞いて、素直に頷くリーダー格女子。
私の目の前に手を伸ばしてきた。
ためらいながらも、私はそっとその手を握った。
「宮田さん…今までごめん。
本当にごめんなさい。」
頭を下げる彼女。
…今までのことを思うと、ごめんと言われたからってはい、そうですか、って許せるわけじゃない。
でもお互いに、苦しんでたことを知ったから。
「…今すぐには無理だけど、
許せるときがきたら…
そのときは友達になってください。」
私の言葉にばっと顔を上げ、涙を流しながらうん、と大きく頷いた彼女。
いつか彼女と笑い合えるときがきたらいいな…。
自然とそう思えた。
ふと青山さんのほうを見ると、
ふわっと微笑んでいて、まるでよかったねと言ってくれているかのようだった。
そして目が合ったとき、私の心臓はありえないくらいにドキドキしていた。
初めての胸の高鳴り。
彼女のきれいな瞳から目が離せない。
…この瞬間、
私は恋に落ちた。
青山夏美を好きになってしまった。