めんどくさがり系女子の恋愛事情
グラウンドからは野球部の声が、
校舎内からは吹奏楽部が奏でる音が聞こえてきた。
廊下には誰もいない。
少しオレンジがかったそこを、一人で歩いていた。
教室に着き、ドアを開けようとすると中から声がする。
…誰だよ、こんな時間まで残ってるのは。
部活ないならさっさと帰れよ、と思いながら中を覗くと
「…え、なんで…」
西日がさす教室で
桃と
高野くんが
向かい合って立っていた。
二人とも真剣な表情でなにか話していた。
…どうして二人がここにいるんだ?
どうして?
私は訳がわからなくなって、落ち着こうとドアから離れようとしたとき
「何も知らないのに勝手なこと言わないで!!」
桃の叫び声が聞こえた。
突然の大声に足を止める。
ここからじゃ何を言ってるのか、正確には聞き取れないが
桃が怒ってるということだけは理解できた。
私を置いて、二人の会話は続いていく。
「たしかに俺は何も知らないよ。
でも…ーー…とは…ーーー…だろ。」
「もう…ーー…よ。
…ーーー…は許してくれない。」
「…ーー…さんはそんな人じゃ…ーー…。」
ところどころ聞こえなかったけど、
なんとなく話してる内容がわかってしまった。
優しい高野くんのことだから、きっと私たちを仲直りさせようとしているんだ。
私たちのことを見ていたことに不覚にも恥ずかしさと嬉しさを感じてしまった。
こんな状況で何を考えてるんだ、と自分で呆れる。
だけど次の瞬間、高野くんの一言で
私の心は奈落の底へ突き落とされた。
「俺は好きだけど。」
どういう流れからそうなったのかはわからない。
今まで聞き取りにくかったのに、ここだけはっきり聞こえてしまった。
よりによって、告白の言葉を…。
そっか、
高野くんは桃が好きなのか。
そっか…。